印象の様な感覚的誤解も、事実認定や意思決定に影響するから気を付けたいと思った。
私の情報発信の最近は、食の安全関連のものが目立つようですが、これは実は私自身ではなく、周囲が感じている印象の様であります。というのも、私自身は、全てに共通する大きな問題として、情報の在り方、発信者の責任や、受け取る側の処理の部分を指摘しているつもりであり、決して食の安全を守ることだけに焦点を合わせた活動をしているつもりはないのです。ただ、結果的に伝わり方や受け手側の印象との間に違いが生まれるというこは、これは私にとっての新たな問題、伝え方、コミュニケーションの問題が浮上したということになります。よって、例えばこういったブログなどの文章の書き方、言葉選び、その他与えられた場での表現の仕方、これらを最適化していこうと思うのであります。
情報氾濫の危うさの一例、実例報告含む
さて、最近一部では話題の「ゲノム編集」食材の流通に関する問題についてですが、この問題はまさに今、社会に氾濫する情報の扱われ方の問題であることがわかる事例を発見しましたので共有したいと思います。※あくまで一例ですのでご留意ください。
まず立場を明確にしておきますが、私も一消費者です。ただ職業柄、情報発信や言語によるコミュニケーションを生業にはしております。では本題。
先日、「ゲノム編集ってそんなにだめなの?」と、非常にわかりやすいストレートな質問を受けました。私の答えは「わからない」です。これね、単純すぎて逆にわかりにくいのかもしれませんが、今ゲノム編集食材について根強い反対派の方々が主張されている点は、超おおざっぱに言うと、
「わからない」。リスクがわからない、だから流通させるならちゃんと検証してからにしてほしいと言っているのです。※ざっくり表現には注意して下さい。
ただ気を付けてほしいのは、これだけで「なるほどダメじゃん!」なんて決めるのはそれこそ誤解の基になるだけ。「なるほど」ともし思ったなら、
「何を根拠に検証していないと言っているのか?」、
それを知ろうとしないと、
ただの感情的な反対派勢力にしかならない。
当然、事実確認したうえで、結果規制は必要ないと判断するのも各自の自由なのですよ。だから、判断の過程に大きな問題がなければ、賛成反対はどちらでもいいと言っているのです。
ここまでは、今日一番書きたいことの序章です。
では本題ですが、
ゲノム編集食材の流通問題に関しては、おそらく現状のところ、まだ消費者の多くが充分に理解していない。※ちなみに例えば国会議員の方も消費者ですが。要は判断材料がない段階とみて外さないと思います。(この見解は、私がこれから指摘することの前提となる事実認定の一部です)
では、何かのきっかけ、例えば知人やSNSから、「ゲノム編集のトマトの苗が小学校や障碍者施設に無償配布される」ってきいたけど・・・。みたいなことで、ふとした興味がわいた場合に、多くの方はどういう行動をするのか。断片的につぶやかれるSNSを参考にしたり、なんとなくネット検索でヒットした動画を見てみたり。ヒットしたけど1時間もあるからやめとこうとか、まあいっか、良くわからんし、みたいに、それこそ多様かと。
それら全部について問題視してても話が進まない。なのでここでは、「私も少しは勉強しなきゃ」と思った方という前提で話を進めます。※例えば、一時間ちょと長いけど見てみようと思った方ということ。
「勉強しよう」と思った場合、近年はほとんどの方がまずネット検索するでしょ。その先にある情報取り扱い上のリスクについて、これが今日の本丸なのです。
興味の先で起こりうる、情報の取り扱い上のリスクについて
ここに、私自身が「ゲノム編集」食材の安全性について正しく理解するために得た情報二つを並べてみます。
①印鑰智哉氏講演会「おしえて!いんやくさん!ゲノム編集は日本の農業の未来になるって本当?〜5月からゲノム編集トマトがやってくる〜」
②くらしあんしん講座「食と安全~ゲノム編集食品の基礎知識」を開催しました
https://www.coop-mie.jp/report/report-31632/
①は、「くまもとのタネを守る会」の方々が企画し、印鑰智哉さんが講師としてお話されているものです。
②は三重コープさんは企画したと思われる講座の案内と報告であり、受講者さんの感想なども見ることができます。
さて、ここで私が指摘しておきたいことは、とてもややこしい話ではあるのですが、事実が見えなくなる情報取り扱い上のリスクが明確に見えるということです。
①の動画を見てそこで得た知識を事実認定している場合、②の情報の中にどうにもつじつまが合わなくなる事実が浮き上がってきます。
【私が見つけた一致しない点①】
①の動画で印鑰さんは、ゲノム編集技術の具体的な手法を紹介して、ハサミで編集するようなイメージは実態と違う。時にこれは誤解のもとであると指摘されています。
一方②のウェブページには、受講者さんの感想のまとめとして、「ゲノム編集をハサミ遺伝子として例えていたところがわかりやすかった」と書かれています。
【私が見つけた一致しない点②】
①の動画を見た結果、私本人は「わからないことだらけだなあ」という印象を受けました。そして遺伝子組み換えとゲノム編集の違いについては、違うというより使ている技術はほぼ同じであるという解釈をしました。また同時に、その解釈は、一般的にはなかなか専門的で、難しい話という印象ではありました。印鑰さんは「難しい話ですが大切なことなので頑張ってついてきてください」という言葉を動画の中で使われてます。一方、②のページからうかがえる受講者さんの反応などの言葉表現を見ると、「わかりやすく」「よくわかった」とありますが、そこに感覚的に違和感をぬぐえません。
【私が見つけた一致しない点③】
①では「ゲノム編集は自然界でも起こっていることと同じ」ではないことを具体的に説明しています。
②にある表記には、ゲノム編集のそれには言及してませんが、「遺伝子組み換えは自然界で起こらないことであり、そちらの方が危険・・・」という表現があります。これはことばから想像するに、「ゲノム編集は自然での起こっていることだから危険度は低い」というイメージを抱いたということが言えるように思えます。
実際の情報の比較はここまでですが、この比較から、私が指摘したいリスクは、食の安心安全にかかわるリスクの具体ではありません。それ以前に、出回る情報の違いによって、できる限り同じ事実認知の上で議論されるべき重要な問題が、それぞれ違う事実認定のまま、諸問題ごちゃまぜになったまま、ざっくりした多数決の中で決まっていってしまうリスクです。
ただ気を付けたいのは、上記の情報の比較があるからと言って(または情報が具体的であるからといって)、②の側が正しくないということにはなりません。例えばこの問題に気づいた私の場合、次の疑問を解消しなければなりません。②の方々が受けた講義の内容です。これを、どれくらいの知識レベルの方が、どういう内容、資料を用いて実施したのか。それを見ずしてどちらが正しいかなど、判断できないということになります。
ぜひ皆さんもご自身で、最低でも2つ以上の複数の違う意見、見解を見比べて、できる限り正しい事実認定の上で自身の意思決定を行っていただくことをお勧めします。
最後に私個人の意見を表明(いまのところ)
※ここからは、私個人の意見になります。ぜひ聞いていただきたいですが、共感を持たれた場合でも、これだけで意思決定するのは情報処理が雑すぎます。参考資料等が欲しい方は、一部ご案内は可能です。
今のところの私が知りえた情報を並べてみますと下記のとおりです。
私の事実認定①
ゲノム編集食材の流通にあたって、諸外国と比較しても審議時間は圧倒的に短く、実物での検証等は実施されていない
私の事実認定②
ゲノム編集食材のリスクに関する見解は、少なくとも複数存在し、そこの議論は行われていない
私の事実認定③
実際に国の見解に対して科学的根拠を提示して慎重な議論を求める活動が行われている最中である
私の事実認定④
③において、提出されている意見書や質問事項に対して、国は根拠を伴う明確な返答をしていない。(これが明確にあれば私も理解が進むのに)
私の事実認定⑤
ゲノム編集食材に表示義務がないことに関しては、今のところ否定しようがない事実関係が指摘されているが、国は当初の見解を変えないまま検討する様子も見せていない。
※詳しく知りたい方は情報源を紹介します。
私の事実認定⑥
多くの消費者がまだ根本的に判断できるだけの知識を持っていない。
全てではありませんが、ざっくり上記の様な事実認定の上で少なくとも国は表示義務は再検討するべきではないかと思います。理由はわかりませんが、不自然なほど早く可決されていった流れ、なぜか有事の裏で、大きく報道されないまま進む様を総合的に判断すると、通ってしまった法案は一旦はおいておくしかないとしても、例えば現在署名活動なども行われている、「全国の教育委員会、障害者施設にゲノム編集技術で作られたトマトの苗が無償配布される件」などは、いくら何でも時期尚早と言わざるを得ないと考えます。法案が通ってしまっている事実は事実。これをひっくり返すのはそれこそ時間がかかる。本来であれば流通前にされてしかりと思われる経過観察ではあるが、流通するのだから皆で正しい知識を持って観察し、議論を深めるしか今はない。目先のことを言えば、無償配布の様な行為は推進派の普及活動の片棒を担ぐ行為だと、今の段階では見るほか視点が見つからない。私個人はそういう意見であります。
ぜひ皆さんも、立場ある方も含め、全員が当事者である問題です。
日本独特の文化の壁があることは充分承知ですが、これを機に議論を日常に少しずつ取り入れていく勇気を持たれてはいかがでしょうか?
最後に
ゲノム編集や伝子組み換え等、これらの影響は人間の食の安全だけの問題ではない。生態系に与える影響。こういった面も巡り巡ってすべて人類に跳ね返ってくる重要な問題だと私は思う。実は一番大きな問題は人類側が自身も動物の一部であることを忘れ果てて、平気で自己都合に合わせて所有物のように自然を扱っていることだと思う。ホモサピエンスも大きな自然生態系の一部の種であるという動かない事実を再確認してもう少し謙虚にならなければ、おそらくわれわれに未来はない。そんなことは山で遊んでいれば、嫌でも理解できることだと思うのですが。
「地球にやさしく」まずこれからやめましょうよ。
「どうかお手柔らかにお願いします、そちらの法則に合わせて暮らしますから」
これが事実に沿ったスローガンではないか?
ちなみに、話題のSDGs。残念だがこの中見は、謙虚な姿勢とは真逆み見える。
それではまた
2021.11.16 マテオフラットこと松尾俊治